三度目のデートの帰り道、改札の前で足を止めたのは莉央のほうだった。
「貴子さんの家、行ってみたい」
「いま言う?」
「いま言わないと、たぶんずっと言えないので」
貴子は笑って、莉央の手を引いた。
教室でいつも背筋を伸ばして座っていた学生が、卒業式の日に震える声で告白してきたときと同じ顔をしていた。
部屋に上がってからも、莉央はソファの端に浅く腰掛けたまま、湯気の立つマグを両手で抱えている。
「落ち着かない?」
「なんか……まだ、実感がなくて」
「実感って」
「貴子さんと、恋人になった自覚が、まだわかないっていうか」
その一言で、貴子の目の奥の温度が変わった。
マグを取り上げてテーブルに置き、莉央の膝の上に手を乗せる。
「へえ。私は毎日ちゃんと自覚してるけど」
「え、」
「自覚、持たせてあげようか」
「ちょ、貴子さ……先生っ」
「いまさら先生はずるいでしょう」
ソファに背中を沈められて、莉央は目を丸くした。
ブラウスのボタンを上から順に外していく指は、講義中に白墨を持っていたときと同じくらい淡々としている。
そのくせ唇だけが熱くて、鎖骨のくぼみに落ちるたび莉央の喉が鳴った。
「ん、……っ、待って」
「待たない」
「まだ電気、ついてる」
「ついてたほうがよく見えるもの」
スカートのホックが外れ、下着が膝までおろされる。
莉央は咄嗟に脚を閉じたが、貴子の手のひらが内腿に滑り込み、あっけなく割り開かれた。
床に膝をついた貴子が、そのまま顔を伏せる気配に、莉央は慌てて身を起こそうとする。
「や、やだ、そんなとこ……汚いよ」
「汚くないよ」
「だって、シャワーも浴びてないのに」
「一日中、私の隣を歩いてた莉央でしょう。汚いわけないでしょ」
言い終わらないうちに、温かいものが触れた。
舌先はひどくゆっくりで、外側をなぞるだけで中へは入ってこない。
焦らすというより、確かめるような動きだった。
莉央の腰が浮き、逃げようとしたその瞬間、両腕が太腿の下に回り、脚ごと抱え込まれる。
「あっ、だめ、離して……!」
「離さない。ここ、押さえてないと莉央すぐ逃げるから」

