「一緒に」とうなずいた妻の、守れそうにない約束

寝室には、常夜灯の淡い明かりだけが残っていた。

「……は、ぁ……」

智子の浅い吐息が、静かな部屋にかすかに響く。

遥斗は智子の膝裏に手を添え、ゆっくりと腰を沈める。

深く重なるたび、彼女の喉から「ん……っ、ふ……」と押し殺しきれなかった息がこぼれた。

結婚して二年。

何度も聞いてきた声のはずなのに、今でもその小さな響きひとつで背筋が痺れる。

我ながら、ずいぶん単純だと思う。

シーツを握っていた智子の手が、ふいに遥斗のパジャマの袖口を探った。

指先が布をつかみ、頼りなく引き寄せる。

「……遥斗」

掠れた声は、もっと近くにいて、と言っているように聞こえた。

言葉にされなくても、その合図くらいはもうわかる。

応えるように身体を寄せると、智子の腕が背中に回った。

触れ合う面積が増え、熱が逃げ場をなくしていく。

耳元で「はぁ……ん……」と震える息が繰り返されるたび、遥斗の呼吸もつられるように浅くなっていく。

遥斗の腰の奥に、じわじわと限界が近づいていた。 

——まずいな。

いつもの不安が頭をもたげる。

自分だけが先に行って、智子をひとり中途半端なところへ置き去りにするのが、は嫌だった。

智子は一度も責めたことがない。

それどころか、終わったあとには「気持ちよかったよ」と笑って、遥斗の胸に頬を寄せる。

その優しさに甘えている気がして、時々、胸の奥がちくりと痛む。

遥斗は動きを緩め、汗で額に張りついた智子の前髪を指でよけた。

「智子」

「……ん、なに……?」

語尾は息に溶け、ほとんど囁きだった。

まぶたは半分落ち、視線もまだ定まっていない。

胸が小さく上下し、吸う息のたびに唇がかすかに震えている。

そんな顔を見せられると、遥斗の中にある少し意地の悪い部分が、どうしても目を覚ます。

「俺、そろそろやばいんだけど」

「……うん……っ」

「一緒にイク?」

智子の睫毛がふるりと震えた。

一拍遅れて、こくん、と小さくうなずく。

「うん……一緒、に……」

あまりにも心細い返事で、遥斗は熱い息を漏らした。

可愛い、と口にする代わりに、智子の膝を抱え直す。

TL
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