文香と暮らすようになって一年、付き合ってからは三年になる。
一緒に住み始めたころにあった、ちょっとした緊張はもうどこにもない。
互いの生活のリズムはとっくに覚えてしまって、言葉が少なくても大抵のことは通じる。
喧嘩もしないし、無理もしない。
慣れるというのは便利なことで、便利なぶん、気づかないうちに省いてしまうものもあるのだろう。
省いたのが何なのか、自分でもはっきりしない。
不満と呼ぶには小さすぎるし、誰かに相談するような話でもない。
それでも仕事の手が止まった拍子に、ふとそのことを考えている。
文香が同じものを感じているのかどうか、俺は知らない。
訊けば済むはずなのに、どう訊けばいいのかがわからなかった。
このままでいいと言い切れるほど安心しているわけでも、何かを変えたいと口に出せるほど困っているわけでもない。
その中途半端な感じに名前をつけられないまま、俺は今日も仕事を続けていた。
たぶん今夜も、いつもと同じくらいの時間に帰って、いつもと同じ顔で迎えられる。
そう思っていた。

