「見えなかったぶん、全部聞こえてた」――目隠しのタオルと、同棲一年目の新しい手順

かすれた声で笑って、それから彼女は毛布を引き寄せて口元を隠した。

「わたし、あんな声出るんだね。自分でびっくりした。恥ずかしい」

「俺もびっくりした。三年一緒にいて、まだ知らない文香がいたんだって思ったら……正直、途中から演技じゃなくなってた」

「知ってる。最後のほう、朔の呼吸、ぐちゃぐちゃだった。出るときも、わかった」

「聞こえてたのかよ」

「見えなかったぶん、全部聞こえてた」

赤い顔でそう言われて、返す言葉を失う。

代わりに腕を回して抱き寄せると、文香も跡の残る手を俺の背中に回してきた。

汗ばんだ肌が重なり、心臓の音がずれて重なる。

「ねえ朔。またお願いしても、いい?」

「……ああ。今度は俺からも、したいこと言っていいか」

「え、なにそれ。気になる」

「そのうちな」

笑い合って、もう一度抱きしめ直す。

決まりきった夜は、今夜きれいに壊れた。

壊れた隙間から、知らなかった本音が覗いている。

照れくさくて、嬉しくて、俺は文香の額に唇を押し当てた。

TL
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