僕はセラピストで、彼女は客だ。
女性向けの風俗という仕事柄、予約は切れ目なく入るし、どの人にも同じだけ丁寧でいるつもりでいる。
穂乃香は二十三歳、今日が初めての利用で、自分から連絡をくれた人だった。
希望も、最初からはっきりしていた。
初めてを終わらせたい、と。
それ以上でも以下でもない依頼として、僕は受けた。
送られてきた文面は業務連絡みたいに整っていて、そのくせ一行だけ、震えるみたいに本音が混ざっていた。
どういうつもりで書いたのかは、僕には分からない。
分からないまま、読み返すたびにその一行だけが残る。
他の客より熱が入っていることには、受けた時から薄々気づいていた。
気づいたところで口に出すものでもないし、客扱いのまま頭の隅に置いておけばいい話だ。
急がせない、怖がらせない、こちらの都合で先へ進めない。
初めての人を相手にする時にいつもやることを、順番に並べ直す。
やることは分かっている。
何度もやってきたことだ。
そう自分に言い聞かせて、僕は約束の時間を待った。

