頭を撫でると、彼女は猫みたいに目を細めて、そのまま僕の胸に顔をうずめてきた。
背中に回った腕が、さっきよりずっと遠慮がない。
「痛いとこ、ない?」
「ちょっとだけ。でも、いい痛み」
「じゃああとでお風呂、ゆっくり入ろう。僕が洗ってあげる」
「……子どもみたい」
「甘えていい日だよ。頑張ったごほうび」
笑って、ついでに唇にキスをした。
穂乃香は驚いたあと、嬉しそうに自分からもう一度ねだってきて、その顔がまた可愛くて困る。
「翔太さん、ずるい」
「何が」
「そういう顔で、そういうこと言うの」
「それが仕事だから」
そう言いながら、胸の奥でだけ、嘘つき、と自分に言う。
穂乃香の髪に鼻先を埋めて、汗とシャンプーの匂いを吸い込んだ。
彼女はくすぐったそうに笑って、僕の腕の中で丸くなる。
窓の外の夜景は、さっきよりずっと賑やかになっていた。
その光を背にして、僕たちはしばらく、どちらも動かないまま、くっついて笑っていた。

