「智子」
「……ん」
「大丈夫?」
「うん……」
返事のあとに、こくこく、と小さくうなずく。
しばらくして智子がそろそろと顔を上げた。
とろけていた目に少しずつ焦点が戻り、自分が何を叫んだのか思い出したらしい。
目元から頬へ、みるみる赤みが広がっていった。
「……あの」
「うん」
「……先に、イっちゃった」
「聞こえてた」
「……もう」
智子は恥ずかしそうに息を吐き、片手で口元を覆った。
けれど、遥斗から目を逸らさない。
眉を少し下げ、約束を守れなかったことを気にするように、申し訳なさそうな顔で見上げてくる。
「ごめんね、遥斗」
謝ることじゃないだろ、と言いかけて、遥斗は言葉を飲み込んだ。
赤らんだ頬。
潤んだ目。
まだ整いきらない呼吸。
困ったようにわずかに歪んだ唇。
その顔が、あまりにも可愛かった。
こんな表情を独り占めできる場所に、自分はいる。
遥斗は指の背で智子の頬をそっとなぞった。

