けれど、その拍子に漏れた「ぁん……っ」という声はさっきよりも高かった。
「ね、遥斗……っ、わたし、どうしよう……っ、息……っ」
「大丈夫。俺に合わせて。……吸って、吐いて」
「ん……すぅ……は、ぁ……っ」
「そう。俺も、もうすぐだから」
そう言いながら、自分にも言い聞かせる。
焦るな。
置いていくな。
シーツの上で指を絡めると、智子は縋るように強く握り返した。
「手、離さないで……っ」
「離さない」
短く答えると、智子の唇が途切れ途切れに遥斗の名前を呼んだ。
「はる、と……はぁ……遥斗……っ」
呼ばれるたびに、身体の奥に溜まった熱が重くなる。
「智子」と呼び返せば、返事の代わりのように、つないだ手がきつく握られた。
やがて智子が何度も小さく首を振り始めた。
汗ばんだ首筋が反り、喉が大きく上下する。
短く吸った息が、声になる前に何度も途切れた。
「遥斗、待っ……は、ぁ……待って……っ」
「無理そう?」
「ちが、う……もう、むり……息、できな……っ」
「大丈夫。俺を見て、息して」
答える余裕は、もうほとんど残っていなかったのだろう。
智子は「ぁ……っ、は……っ」と声にならない息を漏らし、両腕を伸ばして遥斗の首にしがみついた。
耳元で乱れた呼吸が弾ける。
「——だめ、わたし、先にイッちゃう……っ!」
叫ぶような声だった。
恥じらいも我慢も、全部振り切ってしまったような。
次の瞬間、智子の全身が強張った。
背中が弓なりに浮き、爪が遥斗の肩に食い込む。
「ぁ……っ、あ……ん、ん——っ」
声が途切れ、息が止まり、それから「はぁぁ……っ」と堰を切ったように長く吐き出された。
遥斗は動きを止め、智子の背中を抱きしめた。
細かな震えが収まるまで、つないだ手も離さない。
「ゆっくり息して。……そう、大丈夫」
自分の限界もぎりぎりのところまで来ていた。
それでも今は、腕の中の智子を急かす気にはなれなかった。
「……っ、はぁ……はぁ……ん……」
やがて智子の腕から、ゆっくり力が抜けていく。
汗で濡れた額が、遥斗の首筋に押しつけられた。
二人分の荒い息だけが、しばらく寝室に重なった。

