結婚して二年になる。
遥斗にとって智子は、笑い方も、黙るときの間の取り方も、たいてい見当がつく相手だった。
それでも慣れきってしまったわけではなく、彼女のささやかな反応ひとつで背筋が痺れるのだから、我ながらどうかと思う。
言葉にしない合図を互いに読み取れる程度には、二人きりの夜は静かに積み重なってきた。
気にかかることがあるとすれば、ひとつだけだ。
遥斗はいつも、自分ばかりが先へ行って、智子をひとり中途半端なところに置き去りにするのが、何よりいやだった。
彼女は一度も文句を言ったことがない。
それどころか「よかったよ」と笑って、遥斗の胸に頬を寄せてくるのだ。
その優しさに甘えているという自覚が、時々ちくりと胸を刺す。
だから遥斗は、智子の表情や声の小さな変化を、つい目で追ってしまう。
けれど、確かめたところで、彼女が本当のところどう思っているのかまでは、わかるわけではない。
二年ぶんの夜を数えても、そこだけは手探りのままだった。

