あと五分、この腕の中で ―湯船で始まる、二度目の情事―

半年前の飲み会の夜、酔った勢いで告白してきたのは光輝のほうだった。

翌朝には真っ赤な顔で「昨日のは」と言いかけ、そのまま黙り込んだ後輩だ。

それから半年、光輝は俊介をいまも「俊介さん」と呼び、敬語を崩さない。

俊介のほうは、その律儀さごと相手を引き寄せるようにして、ここまで来た。

半年という時間は、相手の癖をひと通り覚えるには十分だった。

気にかかるのは、言いかけて途切れる語尾だ。

肯定も否定も、光輝の口から出るときは最後まで言い切られないことがある。

肝心なところで言葉を飲み込み、黙ってしまう。

その沈黙の質は、あの朝からひとつも変わっていない。

俊介はそれを急かさない。

待っていればたいてい光輝のほうから口を開く、と知っている分だけ、待つ時間は俊介にとって悪くないものになった。

明日は二人とも休みで、出かける予定もない。

時計を気にしなくていいというだけで、夜の輪郭はずいぶん緩む。

急ぐ理由のどこにもない時間が、まだたっぷりと残されていた。

俊介は、その使い道について、特に何も決めていない。

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