あと五分、この腕の中で ―湯船で始まる、二度目の情事―

湯気が天井にたまって、ときどき雫になって落ちてくる。

その音がやけに大きく聞こえるくらい、浴室は静かだった。

俊介は先に湯船へ身を沈め、後から入ってきた光輝の腰を引き寄せて、自分の脚の間に座らせた。

背中が胸に触れる。

さっきまでベッドで散々乱れていた体は、まだ芯のあたりが熱を持っていて、湯よりも高い温度で俊介の肌を焼いた。

「重くないですか」

「重い。

けど、どかさない」

「なんですかそれ」

光輝が肩越しに笑う。

その笑いが喉で震えるのを、俊介は胸板で受け止めた。

腕を回して、湿った腹に手を置く。

呼吸に合わせて上下する薄い肉の感触が、たまらなく好きだった。

「疲れた?」

「疲れました。

俊介さんのせいです」

「俺のせいか」

「俺の、せいですね……たぶん」

語尾が曖昧になったのは、俊介が唇を耳の裏に寄せたからだ。

まず息だけを吹きかける。

それだけで光輝の肩がぴくりと跳ねた。

半年付き合って、俊介はこの体のどこが一番正直かをもう知っている。

舌先を、耳たぶの下から輪郭に沿ってゆっくり這わせた。

急がない。

湯がちゃぷりと縁で鳴る音より遅く、丁寧に、縁の窪みまでなぞり上げる。

「……っ、や、そこ」

「そこ、なに」

「や、だ……さっき終わったばっかりでしょ」

「うん、終わった。

だから触ってるだけ」

「嘘つき」

嘘ではない、と俊介は思う。

触っているだけだ。

ただ、触り方にだけ意地の悪さを混ぜている。

耳の縁をもう一度、今度は舌の腹で押しつぶすように舐め上げると、光輝の膝が湯の中で立った。

水面が揺れて、光輝自身がもう軽く形を変えているのが見えてしまう。

「光輝、これ」

「見ないでください」

「見るよ。

ここでこうなってんの、俺のせいだろ」

「……俊介さんのせいです」

「じゃあ責任取らないとな」

「取らなくていい、です」

言葉と裏腹に、光輝の背中は俊介の胸から離れようとしない。

それどころか、居心地の良い場所を探すみたいに、わずかに擦り寄ってくる。

俊介は腕をほどいて、両手を光輝の脇の下からくぐらせた。

湯に濡れた肌は指がよく滑る。

肋の一本一本を確かめるように上へ登り、胸の高さで止めた。

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