湯気が天井にたまって、ときどき雫になって落ちてくる。
その音がやけに大きく聞こえるくらい、浴室は静かだった。
俊介は先に湯船へ身を沈め、後から入ってきた光輝の腰を引き寄せて、自分の脚の間に座らせた。
背中が胸に触れる。
さっきまでベッドで散々乱れていた体は、まだ芯のあたりが熱を持っていて、湯よりも高い温度で俊介の肌を焼いた。
「重くないですか」
「重い。
けど、どかさない」
「なんですかそれ」
光輝が肩越しに笑う。
その笑いが喉で震えるのを、俊介は胸板で受け止めた。
腕を回して、湿った腹に手を置く。
呼吸に合わせて上下する薄い肉の感触が、たまらなく好きだった。
「疲れた?」
「疲れました。
俊介さんのせいです」
「俺のせいか」
「俺の、せいですね……たぶん」
語尾が曖昧になったのは、俊介が唇を耳の裏に寄せたからだ。
まず息だけを吹きかける。
それだけで光輝の肩がぴくりと跳ねた。
半年付き合って、俊介はこの体のどこが一番正直かをもう知っている。
舌先を、耳たぶの下から輪郭に沿ってゆっくり這わせた。
急がない。
湯がちゃぷりと縁で鳴る音より遅く、丁寧に、縁の窪みまでなぞり上げる。
「……っ、や、そこ」
「そこ、なに」
「や、だ……さっき終わったばっかりでしょ」
「うん、終わった。
だから触ってるだけ」
「嘘つき」
嘘ではない、と俊介は思う。
触っているだけだ。
ただ、触り方にだけ意地の悪さを混ぜている。
耳の縁をもう一度、今度は舌の腹で押しつぶすように舐め上げると、光輝の膝が湯の中で立った。
水面が揺れて、光輝自身がもう軽く形を変えているのが見えてしまう。
「光輝、これ」
「見ないでください」
「見るよ。
ここでこうなってんの、俺のせいだろ」
「……俊介さんのせいです」
「じゃあ責任取らないとな」
「取らなくていい、です」
言葉と裏腹に、光輝の背中は俊介の胸から離れようとしない。
それどころか、居心地の良い場所を探すみたいに、わずかに擦り寄ってくる。
俊介は腕をほどいて、両手を光輝の脇の下からくぐらせた。
湯に濡れた肌は指がよく滑る。
肋の一本一本を確かめるように上へ登り、胸の高さで止めた。

