あと五分、この腕の中で ―湯船で始まる、二度目の情事―

その勝手さが、俊介にはどうしようもなく愛おしい。

「あ、っ、ここ……っ」

「そこ、好きだな」

「好き、です……っ、ん、あ」

俊介は動かずに、ただ光輝の腰に手を添えていた。

主導権を渡したわけではない。

渡したふりをして、落ちてくる瞬間を支える役にまわっただけだ。

光輝の濡れた前髪を耳にかけてやると、蕩けた目がこちらを見た。

「……見ないで、って言ったのに」

「言ってない」

「今、言います」

「却下」

光輝が笑おうとして、途中で声にならなくなる。

俊介は下から軽く突き上げた。

たった一度、深いところを。

「ぁ……っ!」

それで十分だった。

光輝の体が強張り、湯のなかで震えて、俊介の肩に額を押しつけたまま達する。

締め付けに引きずられるように、俊介も低く息を漏らして、光輝を抱き込んだ。

しばらく、二人とも動かなかった。

水面が少しずつ静まっていく。

光輝の心臓が、密着した胸越しに響いてくる。

「……のぼせました」

「だろうな」

「俊介さんのせいです」

「はいはい」

俊介は光輝の濡れた背中をゆっくり撫でた。

湯がぬるくなりかけている。

出なければいけない、と頭の隅で思うのに、腕の中の重みがあまりに心地よくて、指一本動かす気になれなかった。

「光輝」

「……なんですか」

「明日、休みだよな」

「休みです」

「じゃあ、あと五分」

「五分で済まないやつじゃないですか、それ」

そう言いながら、光輝は俊介の肩口に顔を埋めて、目を閉じてしまった。

返事の代わりに、湯の中で指がからんでくる。

俊介はその指を握り返し、濡れた耳にもう一度だけ唇を寄せてから、何も言わずに抱きしめ直した。

天井から落ちた雫が、ぽつりと水面を叩いた。

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