十年間、賞も役も競ってきた舞台俳優の彰と修真。
互いの実力を誰より知りながら、弱さも本音も見せないまま、同期のライバルとして同じ舞台に立ち続けてきた。
新作で初めて恋人役を演じることになっても、その距離は変わらないはずだった。
札幌公演の千秋楽、修真は台本より二拍だけ間を遅らせた。
そのわずかな沈黙に客席の呼吸まで奪われた彰は、終演後の楽屋で嫉妬を口にする。
嫌味のつもりだった言葉を、修真は嬉しいと受け取った。
鏡の前に残る化粧の粉、片づけられていない衣装、まだ耳の奥で鳴る拍手。
二人きりになった楽屋で、演技の続きを話すはずの会話は、いつから互いを見ていたのかという問いへ変わっていく。
明日の稽古では恋人役として向き合う。
その前夜、二人は舞台では言えない本音を、一つずつ確かめようとしていた。

