「二回叩いたら、そこから二拍」
「そう。彰が先に叩いてもいい」
「順番は決めないんだな」
「……今日、順番を守れなかった男の提案だから」
言いながら、また修真の口元が気まずく歪んだ。
俺はその手の甲に、同じように二度叩き返した。
「……二度、だな」
修真はそう言ってはにかんだ。
衣装を戻し、鏡台を拭いて帰り支度を終わらせた。
外は夜で、雨の匂いがした。
「じゃあ、明日」
「十時だ。遅れるなよ」
修真が背を向けてから、一度だけ振り返って、左手を上げた。
親指が、二度、空を叩いた。
俺も同じように返して、それぞれの夜へ歩き出した。

