発展場の奥に、雑魚寝部屋っちゅうのがある。
安い布団が七枚か八枚、隙間なしで並べて敷いてあって、ひと仕事終えた連中が魚の干物みたいに転がって寝てる部屋や。
俺もその日はさんざん遊んで、もう腰も立たんくらいやったから、いちばん端の布団に潜り込んで目ぇ瞑ってた。
空調の音だけがずうんと低く鳴ってて、誰の寝息か分からん息が幾重にも重なってる。
ああいう場所の眠りは浅い。
半分沈んで、半分は水面に浮いたままや。
で、その水面の上に、ずしり、と重みが乗った。
隣の布団で寝てた子が、寝返りを打ったらしい。
ころん、と転がってきて、俺の太腿にきっちり頭を預けた。
よりにもよって太腿や。
膝の上ならまだええ、腹の上でもまあ笑うて済む。
太腿の付け根寄りのところに後頭部を据えられると、足が動かせん。
ちょっと引こうとしたら、そのぶんだけ追いかけてきて、また同じところに収まる。
寝てるやつのほうが強いんやなと、そのとき初めて知った。
暗いなかで首だけ起こして顔を覗いてみた。
若い。
俺より十は下やろか、頬の線がまだ丸くて、肩幅も薄い。
骨のつくりが細いのに、まぶたの下の睫毛は妙に濃い。
口をちょっとだけ開けて、すぅ、すぅ、と気持ちよさそうに寝息を立ててる。
誰かに散々かわいがられた後らしく、髪が汗で額に張りついてた。
十分ほどは我慢した。
せやけど太腿の血が止まって、指先がじんじんしてきた。
このままやと朝には足が使えんようになる。
しゃあないから、俺は腕を伸ばして、その子の脇の下に手ぇ入れて、猫でも持ち上げるみたいに上へ引っ張りあげた。
起こしてまうかと思うたけど、うんとも言わん。
ずるずると上がってきた頭が、俺の肩と胸のあいだ、ちょうど腕枕の位置にすぽん、と落ちた。
落ちた、というのがほんまに合う収まり方やった。
最初からそこが凹んでて、その子の形に合わせて彫ってあったみたいに。
それきり、ぴたりと動かんようになった。
俺の二の腕を枕にして、鼻先を俺の胸の横に寄せて、また、すぅ、すぅ、とやり出す。
不思議なもんやった。
体は重ねてない。

