発展場で転がり込んできた男に、名前より先に腕枕した件

入れてもないし触ってもない。

汗もお互いのぶんはもう乾きかけてる。

それやのに、この子は全身の重みを俺に預けきってる。

俺は名前も知らん。

どこから来たかも、何しに来たかも知らん。

今晩ここで誰と何回どうしたかも知らん。

知らんことばっかりの相手が、俺の腕の上で、完全に警戒を解いて寝とるわけや。

寝返りっちゅうのはほんまに無意識やったんやろか、と俺は暗い天井を見ながら考えた。

もしかしたら半分だけ起きてて、「この人は蹴らんやろ」と踏んで転がってきたんかもしれん。

そんで太腿では足りんかったから、引っ張りあげられるのを待っとったんかもしれん。

そう考えるとちょっと可愛いし、ちょっと図々しい。

どっちにしても俺はもう腕を抜かれへんようになってた。

歪な関係やと思う。

名前も交わさんまま、腕枕だけしてる男二人や。

せやけど、単純にヤルより、よっぽど暖かかった。

腕は痺れてくるのに、その痺れごと惜しいような気がした。

一時間ほどそうしてたと思う。

あくびみたいな身震いがきて、その子が薄目を開けた。

俺の腕を見て、それから俺の顔を見て、しばらくぼんやりしてから、ちいさい声で「……すみません」と言った。

「太腿のほうがしんどかったで」と言うたら、耳まで赤くなった。

湊、と名前を教えてもらった。

俺は京介やと返した。

順番が逆やなあ、と二人で笑うた。

笑うとるあいだも、湊は腕枕から頭をどけようとせんかった。

「京介さん」

「なんや」

「起きたあとも、ここにおってええですか」

ここ、が腕のことやと分かるまでに少しかかって、分かった瞬間に俺は返事の代わりに髪を撫でた。

湊が目を閉じて、猫みたいに擦り寄せてくる。

そこからはもう、言葉はあんまり要らんかった。

口を合わせたら、さっきまで寝てた子とは思えんくらい熱い息が返ってきた。

舌先を触れ合わせるたび、腕のなかの体がふるっと縮む。

薄い胸を撫で下ろして、乳首を親指で転がすと、布団の上で膝がすり合わされた。

「あ、や……」と口では言うのに、腰は逃げるどころかこっちに寄ってくる。

細い腹、骨の浮いた腰、内腿。

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