「こくっん」と鳴った喉 ――終電を逃した後輩と、シフト表に載らない火曜日

「息、止めないで」

耳元で囁くと、裕一は言われた通りにしようとして失敗した。

吸い込む音が途中で崩れて、細い声になって落ちる。

智也はいったん動きを止め、繋がったまま裕一の腰骨を親指で撫でた。

焦らされ慣れた体は、止められただけで催促するみたいに締まる。

「分かってる? 今、自分から締めた」

「……っ、して、な……」

「してるよ。ずっと」

浅く引いて、また奥まで沈める。

裕一の背中が反って、枕の上で髪が乱れた。

声を殺す癖が抜けないから、智也はその顎に指をかけて上を向かせた。

逃げ場をなくした息が、そのまま喘ぎになって零れる。

「あ、っ、は……智也、さ……」

名前の途中で言葉が溶ける。

何度か呼びかけて、そのたびに続きを失って、しまいには首を振ることしかできなくなった。

汗で貼りついた前髪の下、目の縁が濡れている。

智也は額を合わせて、揺らす速さをほんの少しだけ上げた。

「言わなくていいよ、もう」

返事の代わりに、喉が鳴った。

こくん、と飲み込む音。

さっきと同じ音のはずなのに、今度はどこか甘えているみたいに聞こえて、智也は自分の呼吸まで浅くなるのを感じた。

膝が智也の腰を挟んで、離すまいとするみたいに力がこもる。

「裕一」

呼んでも、返事はなかった。

代わりに、掴まれた腕の指先が震えて、シーツを握り直した。

「聞こえてる?」

「……ん、っ、ん……」

言葉になりきらない音が、耳のすぐそばで続く。

息継ぎの間隔がどんどん短くなって、もう我慢が利いていないのが分かった。

智也は名前をもう一度だけ呼んで、それから何も言わずに、ただ深く揺すった。

智也の背中に裕一の腕が回る。

爪が立つ。

動くたびに裕一の声は言葉を失って、途切れて、智也の肩口で消えた。

一度、深く沈めたまま止めた。

抜こうとすると、裕一の膝が腰に残る。

中が、止めたものを追いかけて小さく動いた。

「まだ、足りない顔してる」

裕一は答えず、喉を鳴らした。

こくん、と。

汗で濡れた睫毛が揺れるだけだった。

智也は一度、根元まで抜いた。

抜けたあとの穴が、空気に触れて小さくひくつく。

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