普段は言わない『好き』をたくさん言う金曜日

金曜の夜、うちのローテーブルには缶のハイボールと、コンビニで買った唐揚げと、健太が「これ絶対うまいから」と言って選んだチーズの塊が並んでいた。

同棲して二年目、金曜はだいたいこれだ。

会社では隣の席で真面目な顔してキーボードを叩いている男が、家ではソファの前に足を投げ出して、二本目の缶を開けている。

「陸ぅ、これ食べた?」

「食べた。うまかった」

「だろ? 俺のセンス」

そう言って笑う健太の目は、もうだいぶとろんとしている。

酒が回るのが早いのは知っている。

三本目の途中くらいから、こいつは急に距離感がおかしくなる。

案の定、健太が膝でずりずりと寄ってきて、俺の肩に頭を乗せた。

「重い」

「重くない。全体重かけてない」

「かけてるだろ」

言いながら押し返さないでいると、健太はますます図に乗って、俺の脚をまたいでそのまま膝の上に座った。

テーブルの向こうにあったはずの顔が、いきなり目の前に来る。

会社では絶対に見せない、ゆるみきった顔だ。

「あのさ、陸」

「なんだよ」

「好き」

普段こいつは、そういうことをまったく言わない。

誕生日にも、記念日みたいな日にも、照れて「まあ、あれだよ、あれ」で済ませる男だ。

それが酒を飲むと、恥ずかしさのねじが全部ゆるむみたいに、簡単に口から出てくる。

「今日はもうそのモードか」

「モードとかじゃない。ずっと思ってるって。言わないだけ」

「知ってるよ」

「知ってたんだ…好き」

健太は俺の首に腕を回して、鼻先を頬にくっつけてきた。

ちゅ、と軽い音がする。

頬、こめかみ、耳のふち。

ついばむみたいなキスを何度も落としながら、腰をもぞもぞと動かして、座り位置を直すふりで押しつけてくる。

デニムの布越しに、もう硬くなりかけているのが当たった。

「おい」

「なに」

「わかってやってるだろ」

「わかってるよ」

平気な顔で言って、健太は上下に揺れるみたいに擦りつけてくる。

俺の腹のあたりに額を押しつけて、「陸の匂いする」なんて言いながら、自分のを俺の脚の付け根にぐっと当てて息を吐いた。

酒のにおいと、こいつの体温が混ざって、こっちまで頭の芯が熱くなってくる。

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