普段は言わない『好き』をたくさん言う金曜日

「たぶんか」

「覚えてなくても、思ってることは変わんないから平気」

理屈になっていない理屈を得意げに言って、健太は俺の腕の内側に鼻をすり寄せた。

テーブルの上では、飲みかけの缶がまだ汗をかいている。

唐揚げは冷めた。

チーズは乾いた。

それでも健太は立ち上がる気配もなく、俺の脇に体を押しつけて、指を絡めてくる。

「陸、好き」

「はいはい」

「ちゃんと返して」

「俺も好きだよ」

「もう一回」

「好きだよ」

「……えへ」

こいつの、酒が抜けたら絶対にしない顔だった。

健太はそのまま俺の手を自分の頬に押しつけて、また唇を寄せてくる。

ちゅ、ちゅ、と軽い音が続いて、ときどき「好き」が混ざる。

俺は天井の照明を眺めながら、その音と言葉を数えるのをやめて、こいつの髪をゆっくり撫でていた。

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